名古屋高等裁判所 昭和57年(う)128号 判決
所論は、要するに、原判決が被告人に適用した覚せい剤取締法四一条の二第一項一号、三号の各規定は、覚せい剤を自己使用の目的で所持し、あるいは使用した者を罪として刑事罰、特に監獄に入れるという処遇方法をとる点で、同法一条の覚せい剤の濫用による保健衛生上の危害を防止しようとする目的、すなわち、覚せい剤使用者を保護しようとする本来の目的に違背しており、ひいては憲法一三条が禁止する立法措置に該当する違憲違法の規定であり無効であるから、原判示各事実が認められたとしても、被告人は無罪であるというのである。
しかし、原審で取り調べた関係各証拠によれば、原判示第一、第二の各事実を認めるに十分であるところ、一般に、法定の除外事由がないのに、覚せい剤を自ら使用する目的で所持し、あるいは自ら使用するときは、それらの行為が覚せい剤濫用の原因となり、習慣性を生じ慢性中毒症などにおちいり、自己の身体及び精神の健康を破壊するだけでなく、遂には非行、犯罪を犯し社会公共に危害を及ぼすおそれのあることは、今日広く知られているところである。のみならず、覚せい剤の使用がその譲渡し、輸入などの罪を助長し、右のような危害を増大させることも明らかである。このことにかんがみれば、覚せい剤取締法が前記各行為を禁止し、同法四一条の二第一項一号、三号をもつてその違反に懲役刑を科することとしているのは、十分根拠があり、右各規定は同法一条の目的に沿いこそすれ、これと背馳するところはなく、もとより、公共の福祉のための必要な立法ということができるのであるから、憲法一三条に違反するものではない。